野球を楽しむ

関西女子野球選手権大会 KINKI CATS−オール兵庫(帝塚山学院大グランド)
 女子野球というものがある。

 男子野球という言い方はしない。なぜか?それは、野球と言えば男がやることの方が圧倒的に多いからである。しかし、野球のルール自体は別に女がやることに対してなにも制限するものはないので(高校野球の甲子園は女子を制限していたが、あれはまた別の話)、必然的に野球をやろうという女性も出てくる。

 なんか難しい出だしになってしまったが、要するに今回は女子野球の試合を見に行ったということです。

 きっかけとなったのはこのホームページから。この春、関西に出来たばっかりの女子野球チーム「KINKI CATS」の方から、チームのホームページにうちからリンクを張ってくれないかというメールが来たのだった。その中で目を引いたのは「ぜひ機会があれば一度女子野球の試合にも足を運んでみて下さい」という一節。僕は野球を見るのは好きだし、女子スポーツ自体にも興味はあるのだが、あまりメジャーでない競技というのはなかなか見るきっかけがないのである。そこにいいきっかけが出来たと思い、リンクをしたのが今年の春ぐらい。

 それから数ヶ月、初の公式戦となる秋の選手権大会が開幕した。KINKI CATSは公式戦初戦を勝利で飾り、僕が見に行った試合が2戦目、相手はオール兵庫という関西女子野球の古豪。10年前の第1回大会からこの大会に出場しつづけているチームで、もちろん実力もある。正直な話、この試合を見逃したらせっかくのきっかけを失ってしまうんじゃないかという気持ちもあった。

 さて、当日。第1試合で開始が10時ということで、早起きをしなければならなかったのだが、相変わらず朝の弱い僕はぎりぎりになって飛び出す。試合会場は大阪狭山の帝塚山学院大グランド。京阪から地下鉄、南海と乗り継いで、金剛駅からバスで10分程度のところにある。門のところで守衛さんのような人に、なぜか名前まで確認される。最初は男だから(大学は女子大だ)だと思っていたが、後から考えればサングラスをかけていたのも怪しさを増していたのかも。

 大学内をグランドの方へ歩くと、次第に声が聞こえてくる。ああ、野球だなあという感じがする。男子も女子も関係ない。

 グランドにつくと、ちょうど試合開始だった。試合中に話し掛けるわけにも行かないので、三塁ベースコーチャーの後ろ辺りから試合を見る。先攻はKINKI CATS。対するオール兵庫のピッチャーは…けっこう速い。スリークウォーター気味から投げられる球は、想像以上に速かった。僕自身が野球経験者じゃないためにそう感じるのかもしれないけど。その投手から、KINKI CATSはタイムリーや相手のミスをつく好走塁で、なんと3点を先制する。

 特に走塁や守備というのは、普段の練習がないと上手く行かないものである(草野球を見ればわかる)。その走塁を指示するのが、3塁コーチャー。よく見ると(いや、よく見なくても)男性のコーチである。あとから聞いた話によると甲子園の経験者の方だと言うことだ。見ていた場所が場所だけに、非常に気になったのだが、走塁だけでなく守備位置の指示や、ピンチのときや打席に入るときも声をかける。本気で野球をしたくて集まったチームのコーチだから、本気の姿が見せられるのだろう。

 さて、試合のほうは追うオール兵庫、逃げるKINKI CATSという展開になる。KINKI CATSは、ランナーを許すものの大量点を取られないように丁寧に一つずつアウトをとっていく野球を徹底し、オール兵庫の攻撃をかわしていく。そして3-2と追い詰められて最終回となる6回。この回もランナーを出す。オール兵庫は盗塁を絡めてプレッシャーをかけてくるが、結局抑えきったKINKI CATSの勝利。新興チームが見事に古豪に競り勝った。

 野球経験者もいれば、ソフトボール出身の人もいて、それぞれに仕事などもあり忙しい中で練習を重ね、野球を楽しむ。やりたいと思ったらそれがやれる環境があるかどうか、それが男と女の間にあった野球での差であったが、こうやって先にやってくれる人がいれば、将来もっと女子野球も盛んになってくれるだろう。野球に興味のある女性の方は、ぜひどんどん飛び込んでいって欲しい。

 そして野球を楽しんでいる姿は、見ている人にも野球をやりたくさせる(何の事はない、要するに僕が野球をやりたくなったということだ)。これは、スタンドから野球を見ているだけでは分からない、近くで見てこそ感じた久しぶりの感覚であった。

 この翌週に行われた準決勝でもKINKI CATSは勝利し、見事準優勝を飾った。今後も頑張ってください。また見に行きますんで。

(補足:KINKI CATSは現在大阪女子野球倶楽部WILDCATSにチーム名を変えて活動しています)