ラストボーイ 関西学生野球 同志社大−近畿大(グリーンスタジアム神戸)

 学園都市で就職試験が終わった後、せっかく2時間かけて神戸まで来たんだしな…と総合運動公園駅で降りる。ユニバではラグビーをやっていたがもう試合が残り少ない時間だったので、神戸サブで練習している選手でも見られないかな…と思っていたら、GS神戸の方からブラスバンドの音が。この日は関西学生野球の第5節が行われている(金曜が雨で中止になったので2試合目)。第1試合が10時半開始で現在3時前、第2試合も終盤かなと思い様子だけを見ようとスロープを上がった。

 球場の中を覗いてみるとちょうどスコアボードが見える。回は…まだ2回だ。なんと遅い進行。あまり個人的にはそそらないカードではあったが、勢いで入ってしまうことにする。チケットを買うとき学生に第1試合の立命−京大戦の結果を聞くと、なんと4−4の引分とのこと。ここまで未勝利の京大が健闘して、試合が長引いたのだろうと勝手に解釈する。

 席は自由なので、普段はまず入れないバックネット裏最前列のやや一塁側に座る。ベンチ上の内野席の部分には、両側とも応援団とチアリーダーが。日曜ということもあってかどちらも大人数で、それぞれ40人ぐらいはいようか(半分がチアだ)。おかげでブラスが凄い大音量である。普段GSのプロ野球の試合で応援団のトランペットやメガホンがうるさいと言っている人はびっくりするだろうな。近大の試合は西京極で何試合か見た覚えがあるが、チアまで含めたフルの応援を見たのは初めての気がする。なんせ優勝のかかった試合で誰一人来てなかったこともあったし。

 席につくと2回が終了。同志社が1−0で1点リードである。近大のピッチャーは2年前の秋にも見た長身・近平。195cm・80kgの体は相変わらず長い(身長が1cm伸びていた)。長身だが、130km/h台半ばがMAXのストレートと、100km/h程度まで落ちるカーブとのコンビネーションが持ち味なのも変わっていない。3回表を三者凡退、4回もヒット一本に抑える。

 対する同志社の投手は3年の渡辺。ストレートはMAXで142km/hぐらいか。こちらも3回裏は三者凡退に抑えるが、4回は先頭の大西が気迫の内野安打。前にも書いたが、近大には現西武の松坂大輔が甲子園で延長15回の死闘を繰り広げたPLメンバーが多い。この大西、松丸、そしてキャッチャーの田中雅彦。そして同志社のキャプテンはそのPLのキャプテンだった平石である。その大西をバントで送り、チャンスを作るが、3番・林、4番・中村がともに凡退しチェンジ。

 5回表、同志社も内野安打ででたランナーを送って2塁。ここで2番藤村がタイムリー、4番松田、続く末永にも連打が出てもう1点追加し、3−1とリードを広げる。その裏は渡辺が三者凡退に切ってとり、調子に乗ってくる。

 6回表またも同志社チャンス。二塁打送りバントでランナー三塁。しかし近平、9番中江を100km/hのスローカーブで見事に三振に取る。しかしそれで気が抜けたわけでもなかろうが、1番執行にタイムリー、2番藤村にも連打を浴びてなお一、二塁。続く平石のあたりはファーストゴロ、しかしファーストが胸に当てたボールが横に逸れて内野安打になり満塁。近平はここで降板、5回2/3を11安打4失点といまいちの結果であった。

 投手は貴志(2年)。ストレートと、フォークか? こんなに近くで見てても、素人だから球種はわからんものである。4番松田は2−1からショートゴロでチェンジ。近大ピンチを切り抜ける。その裏も渡辺がなんなく抑え、7回表、代打の関係で投手は3人目・橋本和也へ。先頭打者にデッドボールを与えるもストレートで押しまくり三連続三振。

 ここから7回裏・8回表裏と連続三者凡退。近大も8回まで橋本の前に3安打と完全に抑え込まれている。8回裏の攻撃で三振したあと近大のキャプテン米田がベンチ前でバットを放り投げていたのが気になる。道具をぞんざいに扱う選手はあまり好きではないのだが。9回表、近大の投手は4人目・米倉。先頭打者を出すが後を続かせず無失点。

 いよいよ最後の近大の攻撃、代打福島が内野安打で出塁(代走・広瀬)。大西がセンターの右に持っていき一、三塁。さらに田中雅彦がライト前で1点追加してノーアウト一、二塁。8回まで完璧だった橋本を攻めたてる。しかし続く林はショートゴロ、ここでショートがフィルダースチョイスで満塁!(代走・佐久間)。ここに来る前に受けた就職試験でフィルダースチョイスを日本語に訳す問題があったのを思い出した。

 しかし4番中村の打席、センターライナーでタッチアップし1点入るが、判断を誤り飛び出していたセカンドランナーが刺されアウト、反撃ムードに水を差す形となり4−2、二死一塁となる。このミスでほっと安心した同志社側スタンドは次の瞬間に声を失う、田中篤史の打球はライトフェンスを越える同点2ランホームラン。一塁側はベンチもスタンドも大騒ぎ。キャプテン米田にもセンター前ヒットを打たれたところで、ようやく同志社は投手交代。どうみても引っ張りすぎだった。

 代わって出てきた投手は吉田。松丸への初球、いきなり米田がスチールを敢行。これが成功し、一打サヨナラとなる二死二塁。投手にプレッシャーをかける。ストレートで追い込んだあと一球外してカウント2−1、次の球は力んだのか手前でワンバウンドしてワイルドピッチとなりランナーは三塁へ。高まるボルテージ、ストレートが入らずよく見た松丸は四球で一塁へ。

 ここで米倉の打席、近大は代打に昨季まで出場の無い4年・栗本を送る。運命の打席、栗本は初球を叩き、その打球はセカンドの上を越えライト前へ! サヨナラヒット! キャプテン米田がホームベースを踏むと近大ナインは飛び出し大騒ぎ! 対照的に同志社ナインはもう歩くのもおぼつかないほどふらふら。4−0から、そこまで抑えられていた打線が爆発しての大逆転勝利。これが近大の底力か。

 試合が終わって球場外に出ると、同志社の選手たちが集まっている。全員が顔を上げられない。ミーティングが終わった後も地面に座り込んで立ち上がれない選手が複数いた。勝利を確信した後での逆転での敗戦、それは今季の同志社の優勝可能性をゼロにしてしまう負けでもあったのだった。