静かな試合

日韓親善大学野球試合 東京六大学選抜−韓国大学選抜(神宮球場
 今年の夏は、関東の各ホーム球場を巡ろうと計画を立てることにした。最初は4日で関東5球場をまわる強行日程の予定だったのだが、横浜スタジアムが巨人戦のみでチケットが取れず断念(当日券に並ぶほどの精神的余裕はなかったため)。とりあえず4球場を制覇することを目標とした。

 東京に着いたのは8月1日夜。友人宅に泊めてもらい、翌2日、関東ではプロ野球の試合は東京ドームの巨人戦のみ。チケットを取るために並ぶような性格ではないので、朝から東京ドームでも野球体育博物館に行く。そして、14時から神宮で東京六大学選抜と韓国大学選抜の試合があるということなので、それを見に行くことにする。

 渋谷の方から地図を頼りに歩いていくと、建物の間から照明設備が見える。普段は駅からすぐで他に建物もないGS神戸に行っているので、こういうふうにして球場に行くのも珍しい体験だ。前に大きな広場(駐車場だろうか?)があり、キャッチボールをしている人もいる。数日後に花火大会があるということで垂れ幕などが掲げられている門をくぐろうとすると…そこは国立競技場だった。ここには国立競技場、神宮球場のほかにも秩父宮ラグビー場などスポーツ施設が密集している。このようなところが新宿から2駅といった都会の真中にあるというのは財産である。新しく作るのは不可能であるからだ。

 そんなわけでちょっと迷って神宮球場に入ったのは試合開始直前、両軍のメンバーの紹介が行われていた。入場料が1000円というのはちと高い。

 韓国大学選抜の選手はもちろん知らないが、東京六大学の選手についてもほとんど知識がない。ひょっとしたらドラフト候補もいるのかもしれないが、まったく分からない。メンバー表を見ていて目に付いたのは9番ライトの池辺啓二(慶大)。智弁和歌山出身の19歳、名前に聞き覚えがあるところからすると、優勝時のメンバーだろう(後で調べたところ、やはりそうで、優勝メンバーの4番打者だった。池辺のことを調べていたときに、偶然先発の一場靖弘(明大)が同じページで、桐生第一のエースとして紹介されていた。くわしくはここ)。

 席はどこでも同じ値段なので、ネット裏2列目の席に座る。ふつうなら大学野球であってもまず座れない席ではあるが、リーグ戦ですらない試合なのでお客さんはほとんどいない。なんとも静かで異様な光景である。

 試合は東京六大学選抜の先攻。先頭が四球で出て二番が、送りバント、と見せかけていきなりバスターエンドラン。が、ファールであらためて送りバント。しかし結局この回無得点。3回表には、上で名前を出した池辺の流した打球がレフトポール際に飛び込みホームラン、1点先制する。

 これだけ静かな球場だと、球音はもちろんのこと、グラウンドで出される声もよく聞こえる。東京六大学のセカンド・西谷は先発の一場と同じ明大で同い年というせいか、よく声を出している。そして、韓国大学選抜のメンバーももちろん声を出している、が、韓国語のため何を言っているかはまったくよく分からない。まあ似たようなことを言っているのだろうが。

 6回表に、それまでヒット一本だった東京六大学選抜は、代わった2番手投手の金栄倍から連打で1点をあげる。その裏、韓国大学選抜も反撃する。2点タイムリーの後、1点を追加してさらに3ランが飛び出して一挙6点を上げ逆転する。

 静かな試合、分からない選手ということでだんだん退屈してきてしまった。神宮球場内を見てまわろうということで席をたった。裏の通路を通って、3塁側内野の一番外野側、もっとも高いところに来てみる。スタンドは青一色できれいな感じだが、まあ観客が入ってしまえば見えなくなってしまうだろう。

 ぱっと見はきれいな球場ではあるが、伝統のある古い球場というせいか、通路は結構汚い。そして、清掃がきちんとされていないのだろうか、タバコの吸殻やジェット風船、紙コップなどが微妙に残っていたりする。後で気付いたのだが、僕が入っていた内野席の外野側の部分は立ち入り禁止になっていたから、その日のゴミであるはずはない。

 試合は7-2と韓国選抜がリードして9回表を迎える。2点を返してなお1アウト満塁から4番鳥谷(早大)。タイムリーで2点差。5番打者がセカンドゴロで1点返し、1点差として2アウト1、3塁という盛り上がるべき展開。しかし三振でゲームセットである。