リプレイ 第74回選抜高校野球大会準決勝(阪神甲子園球場)

 プロ野球の開幕がだんだん早くなり、いつのまにか春の高校野球と時期的に重なるようになった。阪神タイガースが何十年ぶりかの快進撃を続ける裏で、その本拠地の甲子園球場ではセンバツがクライマックスを迎えていた。その熱戦を見るべく、晴天の下甲子園球場へ足を運んだ。

 朝までバイトだったというのりを氏と球場前でおちあい、レフト側外野席へ。去年来たときは内野席だったので、初の甲子園外野席である。高校野球は外野席が無料。交通費だけで見られるのも嬉しいことだ。今日のカードは鳴門工(徳島)−関西(岡山)、福井商(福井)−報徳学園(兵庫)。そういえば昨年観戦したのは準々決勝で、観戦記では「高校野球は準々決勝が面白い」という言葉を紹介したが、今年の準々決勝は大乱戦。鳴門工広島商に19-1、関西は尽誠学園に10-1と圧勝。福井商も追い上げられたものの8点先制して明徳義塾に10-8、投手戦が予想された報徳−浦和学院戦も7-5と荒れ気味の試合だった。はたして準決勝はどうなるのか。

第1試合 鳴門工(徳島)−関西(岡山)
 昨年秋の準優勝校・関西のエース・宮本賢と、準々決勝で大爆発した鳴門工の打線の対決が注目という前評判の試合。のりを氏は関西の応援で流れるミニモニが不服そうだが(笑)、それは関係なく試合は投手戦に。4回表に鳴門工が1点先制。その裏、この日のセンター方向への強風に煽られたビニール袋が球場内に入る。レフトがそれを取りにいこうとすると、袋は風に飛ばされセンターの方へ。センターはそれを取ろうとどんどん前へ。おいおい、プレーが始まったらどうするのさ、と思ったらキャッチャーがタイムをとる。結局更に風で流されてライトがなんとか抑えポケットに収めた。

 6回裏、ショートの悪送球でランナーが2塁へ進む。バッターボックスに入った関西の投手・宮本がレフト線を破り同点。しかし宮本は盗塁失敗でアウト、後が続かず同点のままチェンジ。

 試合途中から隣に男性二人組が座ったのだが、その一方が売り子の女の子(高校生? 外野席の座席の上を歩いている!)からビールを買う(持ち歩かず、注文で出前する方式)。連れの男性が「どうせまた飲むだろうから10分後に来てね〜」と言うと、しっかり10分後に来て、粘ってもう一本買わせる。そしてさらに10分後には、あらかじめビールとおつまみを持ってきて、黙って座席に置き、しっかりと買わせていた。かわいい顔して怖いもんである。

 試合は長打も出ず結局1−1で延長戦へ。表の鳴門工の攻撃、エラー、ヒット、フォアボールで満塁。「ここでスクイズあるかな」「満塁だし、風が強いから外野に打ち上げる方がいいんじゃないの」と話していたら、本当にスクイズ! 満塁でフォースアウトのためタイミングはアウト! しかしキャッチャーがボールを捕ることが出来ず勝ち越し! 「いやあ、本当にスクイズやったなあ」と驚いていたら続くバッターも連続スクイズ! これも成功して3−1。試合を通じてバントを上手く決めていた鳴門工が最終的にそれを生かして勝利をものにした。



第2試合 福井商(福井)−報徳学園(兵庫)
 入退場自由なのをいいことに昼食を外のコンビニに買いに行くと、前の試合の応援を終わった(おそらく関西の)高校生の集団がバスの方に戻っていくのに遭遇。スタンドにいるときと違って、外の狭い道路に出てくるとずいぶんと長い列である。

 第2試合は、第1試合以上の投手戦。今大会ナンバー1投手の評判の高い報徳・大谷と、前日200球近くを投げた福井商・中谷の投げあい。3回裏、この試合の両チーム通じて初のヒットが、タイムリーとなり報徳が1点先制。大谷は5回までノーヒットピッチングで、ひょっとしたらノーヒットノーランか? それもまたオイシイ、と思っていたら6回表に初ヒットをきっかけに福井商も1点取って同点。この段階でまだ1時間も経ってない。なんともスピーディな展開!

 それにしても、ほとんど第1試合と同じような展開。そして7回裏、報徳がスクイズで勝ち越し。おいおい、こんなとこまで同じかよ。という声が届いたのか、満塁から打ち上げたフライが、この日一日中吹いていた強風に煽られ、二塁後方、セカンド、ショート、センター、レフトの間にポトリと落ちてタイムリーとなる。さらにタイムリーが続き、気がついてみれば1−7。試合が決まった。

 翌日の決勝戦は報徳が勝って優勝、昨年秋の大会でも全国制覇した報徳は、新チームの無敗記録を延ばした。はたしてこのチームが夏も出てくるのか。そううまくはいかないのが高校野球の怖さではあるが、もう一度甲子園で見られることを楽しみにしたい。