和田の130キロ台はなぜ打ちにくいか

和田の130キロ台はなぜ打ちにくいか (講談社現代新書)

和田の130キロ台はなぜ打ちにくいか (講談社現代新書)

感想を一言で言うと、薄い。もどかしくてイライラする。和田毅という投手に対して尊敬の念は覚えるが、この本自体はそんなに面白くない。
まず、このタイトルとこの表紙なのに、書き出しが『和田毅というピッチャーをご存知だろうか。』はたしてこの本を買った人の中に、和田を知らない人が何人いるのだろうか。この時点で不安を感じてしまった(タイトル買いした自分の責任だが・・・)
少年時代から大学時代までの話は、まあいい。エピソードはそれ自体が魅力的であれば、それなりに楽しめる。(ただ、この部分も冗長だし中身はやや薄い。『松坂世代 (単行本)』の第4章の方がよほど面白い。文章力の問題もあるだろうが)
(以下、ネタバレあり)
肝心の、打ちにくさに関する謎解きの部分。事実を述べて次の疑問点を出して、の繰り返しになるのだが、スムーズに読み進められる分だけ、逆に物足りなさになっている。そして結論として『ボールの回転数』を持ってくるのだが、肝心の回転数が分からず『しかし僕は、松坂と同程度の数字はもちろん、おそらくそれ以上の回転数に達しているのではないかと推測している』と感覚で片付けてしまうのである。
その後で『被本塁打数』という状況証拠(著者はこれを『物的証拠』と書いているが、これは状況証拠だ)で誤魔化すのだが、結論を『回転数』にするのだったら、計測してその数字を出すべきだった。ここで松坂を上回る数字が出てくれば、この本の読後の納得感はずいぶん違ったものになっていただろう。
本屋でタイトルや帯の文句が気になった人は、エピローグの直前3ページに著者がまとめている『最終結論』の項だけ読めば十分である。