飛び込み

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思えば、社会人になって最初の仕事は、飛び込み営業だった。2週間ほど簡単な商品知識の勉強とロープレをやって、地図にマッピングをして初めて行った街でビルに飛び込んだ。運良く最初に飛び込んだ会社では座って話がさせてくれて、何を作っているかまったく知らずに入ったのによく聞いてくれたなあ。2日後ぐらいに上司を連れて再訪問したけど、残念ながら受注にはつながらなかった。

その後3ヶ月は飛び込みと電話でのアポ取りだったけど、電話でのアポ取りが本当に苦手でしょうがなく、全然できなかった。しょうがないので外に出て飛び込みやるんだけど、話が盛り上がったところは大体もう担当が付いているところだったりして、後でがっかりしたりする。それでも1件だけは受注が取れた。飛び込みで挨拶をして資料を置いてきたところで、たまたま電話がかかってきた。上司と一緒にヒアリングに行って、自分で原稿を作った。
営業をバリバリやっている人の中には、初受注を取ったこと、それで祝ってもらったりした時の喜びを初心として持っている人が少なくない。ただ、自分の場合驚くほどそれが無かった。一応うれしそうなふりはするものの、注文が来たのは偶然だし、やったことは誰でもできることだし、ほとんど上司に助けられて横で聞いてただけだったし。それでも『運も実力のうち』と自分のエネルギーに変える力が営業に必要なのかもしれない。とにかく、僕は初受注を通して自分の営業適性に見切りをつけた。

多分僕が喜びを持てる場は、自分が頭をひねって相手のことを考えて提案して、『そう、そういうのを待ってたんだよ!』と喜んでもらえるような、そんな形なんだと思う。今、逆に営業を受ける立場になって、こちらの現状をふまえた提案をしてくれるところはすごく嬉しいから。滅多に無いけどね。
ともかく、そんな高いレベルの営業をするまでも無く、諸般の事情で営業から離れて、後方支援に回ったのである。それはそれで面白かったけど。


なんでいきなりこんな話をしたかというと、今日久しぶりに飛び込みをしてみたからである。会社の入り口の前で入ろうかやっぱ止めようかと逡巡して、受付に声をかける際のあのドキドキ感は何かを思い出させるものがあり(つまりは進歩が無いとも言えるのだが)建物を出てからも気分の高揚がかなり長い間止まらなかった。後から考えればしっかりアポを取っておくべきだったのだろうが、無意識で飛び込みにこだわっていたのは、そんな感情を呼び起こせという意思が働いたのではあるまいか?

社会人になった最初の頃の感情を思い出して、その頃はまだ気づいていないやりたいことがあって、それからも紆余曲折あって今の場所にいる。そんなことを考えていたら、何か書かずにいられなかったのだ。

会社で今年度の始まりの時、各自の目標を書く際に僕は「自分の成長は自分の責任」と書いた。なぜそんなことを書いたのかをあらためて思い出した。僕はちっとも成長していない、そしてそれは僕の責任だ。