シーソーゲーム

第73回選抜高校野球大会準々決勝(甲子園)
 誰が言ったのか知らないが、「高校野球は準々決勝が一番面白い」という言葉がある。理由は色々あるだろうが、チームも実力のあるチームが残り、緊迫した試合を繰り広げてくれる。今回は初の高校野球観戦に、その最高の準々決勝を選んでみた。

 今回の一つの目当ては、自分の出身地である福岡県の東福岡高校。昨年秋の明治神宮大会(各地区大会の優勝チームによるトーナメント)で優勝し、このセンバツでも優勝候補である。しかし…試合開始が8時半。いくらなんでも早いぞ。こんな早くから試合をはじめる高校生も大変である。前日の深夜(というか当日の早朝)に行われたF1ブラジルGPの中継を見ていたので、寝ていない。ぐずぐずしてたら7時を回ってしまった。慌てて家を出る。

 梅田から阪神電車に乗り甲子園へ。プロ野球も含めて初めての甲子園である。ふと耳に入ってきた会話を聞いてみると、なんでも隣にいる女子高生の集団は、なんと第2試合に登場する関西創価高校の生徒らしい。高校野球の応援というと、「地方からバス○台をだしてやってきました応援部隊」みたいな印象があるが、やはり地元は凄い。電車出勤現地集合である。そして甲子園に到着したときはもちろん第1試合は始まっている。急いで切符を買って3塁側内野席へ。

【第1試合】東福岡(福岡)−常総学院(茨城)

 到着したときには4回表、スコアは2−3で常総がリード。しかし常総学院の投手・村上がマウンドで倒れている。そして、投手は右のサイドスローの平澤に急遽変わった。東福岡はその平澤を攻め立てて1アウト満塁とするが、平澤はキャッチャー鴛海、ピッチャー下野を連続三振でピンチを乗り切った。

 4回裏、東福岡のマウンドは大会屈指の本格派・下野。しかしこれまでの試合でも本調子とはいえない。この日もすでに3点をとられているようにあまりいいわけではないようだ。この回もランナーを2人出すもなんとか無失点で抑える。

 5回の表は東福岡も1番からの好打順。また1アウト満塁とするが、三振、センターフライでまたも無得点。スタンドはため息に包まれる。逆に5回裏常総は6番・出頭のタイムリーで1点追加し2−4。

 6回表もノーアウト1・2塁とするも送りバント失敗、そしてヒットを打つがホームでタッチアウトと点に結びつかない。このころから、第2試合が地元の関西創価の試合ということでスタンドに人がたくさん入ってくる。一方試合はこの後ほとんどランナーも出ず、いよいよ9回。2アウト2塁から3番・福原がセンター前にヒットを打つも、またランナーがホームでタッチアウトになりゲームセット。東福岡は得点まであと一歩というチャンスをいくつも逃し、2−4で敗れてしまった。

【第2試合】尽誠学園(香川)−関西創価(大阪)

 地元大阪の関西創価ということで、3塁側の席は人であふれ返ってきた。アルプスには青・黄・赤の三色旗(学校の旗、というか創価の旗か?)を彩った人文字(文字?)。まわりもみんなその旗を振ったりして創価の応援である。内野だけでなく外野まで埋まっている。

 11時プレーボール。1回表、関西創価の先発はプロからも注目されている野間口。初回は三者凡退でいい滑り出し。しかしアウトごとの創価側の手拍子は迫力十分である。この試合はノートに経過を書きながら観戦することにする(第1試合もだが)。でないと集中できないからだ。

 突然となりのオヤジがタバコを吸い出す。確かに甲子園は禁煙ではないが、こんな人の多いスタンドで喫煙するとはなんて非常識な人なんだ(怒)

 で、1回裏の関西創価の攻撃。フォアボール、フィルダースチョイス送りバントのあとデッドボールで、無安打で1アウト満塁。ここで投手の野間口に打席がまわる。しかしここは見逃し三振。しかし次の曽田がセンター前にタイムリーヒットを放って2点先制した。3塁側はもう勝ったかのような騒ぎようである。

 ここで、1塁側に移動することにする。理由は色々あるが、やはり応援しているわけではないチームの熱狂的応援に包まれるというのはちょっと疲れるものである。尽誠はほとんどが野球留学の生徒であまり好きなチームではないのだが、さすがにここまで声援が違うと判官贔屓にもなってしまうものだ。

 移動の途中にカレーを食べたりしている間に、3回まで終わっていた。1塁側から見た3塁側スタンドはまた凄い迫力である。創価のいいプレイがあるといっせいに動き出す。4回表、尽誠は1アウト3塁からスクイズを決め1点返した。4回裏、5回は両チーム無得点に終わる。

 5回終わってグラウンド整備をすると、かなりのほこりがたっている。相当乾燥しているようだ。その間、尽誠がわのアルプスからモーニング娘。の「I WISH」が流れてくる。なんか応援向きなメロディーでもないなあと思ってそちらを見ると、応援団のもったプラカードに「尽誠ってすばらしい」の文字が。不覚にもちょっと笑ってしまった。

 6回表には無死1・3塁から尽誠の3番・坂田が犠牲フライを打ち同点に追いつく。しかしその裏には四球、送りバント送りバント、四球、死球で2アウト満塁。ここで3番大西が2点タイムリーをセンター前に放ちまた創価が勝ち越す。7回表には尽誠の1番・坂口がライト戦に運び1点返して3−4。試合の行方はさっぱりわからない。

 7回裏、尽誠はピッチャーを左の中村に交代。先頭の野間口にツーベースを打たれるも、飛び出してタッチアウトにする。そして8回表には田中のタイムリーでついに同点!そしてそのまま延長に突入する。球場の雰囲気は最高潮。一つ一つのプレイに歓声とため息が交錯する。

 そして迎えた11回裏。関西創価の先頭打者、4番の金田秀紀が右中間を抜ける3塁打。もう3塁側は割れんばかりの大歓声。ノーアウト3塁、最高の場面で出てきたのはエース・野間口。絶体絶命の場面で尽誠は野間口・曽田にストレートのフォアボールを出し、満塁策をとる。打席には7番の近藤。守備は完全なバックホーム体勢。カァァァーン!打球はセンターへ。センターはいったんバックして、助走をつけながらキャッチしてすぐさまバックホーム!しかしタッチアップした3塁ランナーがホームに駆け込みサヨナラ勝ち!球場全体が悲鳴のような歓声に包まれた。

【第3試合】市川(山梨)−仙台育英(宮城)
 前の試合で疲れてしまった。ぽかぽかとした陽気の中でぼうっとしてくる。実は、財布の中のお金が心もとなく、帰りの電車賃のことを考えると買い食いができなかったというのもある。しかも徹夜明けということで、試合の途中でうとうととしてしまう始末。印象に残ったのは仙台育英の応援。ノリのいい、かつ男っぽい骨のある声の声援。普通と違ったリズム、アレンジなども新鮮でよかった。試合は後半に仙台育英が大量リードしたところで、後に用事が控えていることから甲子園を後にした。

 この後の第4試合は、話題の21世紀枠選出の宜野座が、地元大阪の浪速を延長の末にやぶるというこれもまた素晴らしい試合であった。やはり準々決勝の盛り上がりは凄い。果たして、この4チームのうち、優勝するのはどこなのか、楽しみである。